スイミングコーチも溺れる? お菓子で浮ける? 子どもたちが夢中になった「オボレナイスクーール!」

取材・文 /荒牧しのぶ
こんにちは!コピーライターの荒牧しのぶです。今回、AQUAkids safety projectの「オボレナイスクーール!」に同行し、その現場を取材しました。
私は普段、企業の理念やブランドコンセプトなど、事業の軸となる言葉をつくる仕事をしています。AQUAkids safety project(以下「AQUAkids」)の活動にも、これまで4年間伴走し、コンセプトメッセージやプレスリリースなど、「水辺の安全をどう伝えるか」をあれこれ一緒に考えてきました。
ですが、実際にスイミングスクールで行われるAQUAkidsの授業を見るのは今回が初めて!子どもたちは、どんな表情で水の事故について学ぶのか。深刻になりがちな事故予防のテーマを、AQUAkidsはどうやって楽しい体験へ変えているのか。その現場に立ち会った私が、当日の様子をレポートします。
2026年5月31日、東京・足立区の東京マリン西新井スイミングクラブ(以下「東京マリン」)にて、「オボレナイスクーール!」と題して「着衣泳体験会」が開催されました。
当日は、プール開放やゲームなどのレクリエーションもある「西新井マリンフェス」が開催されており、玄関からとっても賑やか!
参加したのは、親子合わせて47名。私は取材のため、体験会が始まる少し前に会場へ向かいました。

子どもたちが来る前に、AQUAkids代表のすがわらえみさんは、座学を行う場所やプールを確認。東京マリンのコーチのみなさんと、当日の流れについて打ち合わせをしていきます。
授業の中で行われる「溺れる様子を伝える寸劇」を演じるのも、東京マリンのコーチのみなさん。和やかに話しながらも、役割や動きを一つひとつ確認。これからどんなことが始まるのだろうという楽しみと、少しの緊張感が、こちらにも伝わってきます。
コーチのみなさんに事前共有されていた資料には、当日のタイムスケジュールだけでなく、溺れる役や助ける役、寸劇で子どもたちに伝えたいポイントなど、細かく記されていました。すがわら代表が事前にやりとりをしていたコーチ以外は、この日が初対面の方ばかり。また、イベント当日は東京マリンの生徒さん以外もたくさん参加します。安全で楽しめる体験授業にするためにも、こうした打ち合わせでの「互いの目線合わせ」が重要なんだと感じました。
子どもたちに水辺の安全を届けるために、すがわら代表とコーチのみなさんが、一つひとつ認識を揃えていく。東京マリンでは初めての「オボレナイスクーール!」ですが、丁寧な準備とコミュニケーションで子どもたちを迎えます。
すがわら代表も水着に着替えて、準備完了。そうこうしているうちに、子どもたちと保護者のみなさんが、続々と集まってきました。
まずは「えみコーチ!」。距離を縮めてから始まる授業
最初は、ロビーで水辺の安全について学ぶ座学から。
すがわら代表は、到着する子どもたちや、保護者のみなさんに、どんどん声をかけていきます。もうすでに、ここから授業の空気づくりが始まっているんだなと思いました。
AQUAkidsの学びは、一方的に知識を伝える「お勉強」の雰囲気はありません。 まずは、すがわら代表の名前をみんなで覚えるところから。
「えみコーチ!」
子どもたちが声をそろえて名前を呼ぶと、初対面でもグッと距離が縮まります。「知らない大人の話」ではなく、「えみコーチの話」として授業が始まることが、子どもたちの興味を惹きつけるポイントなのかもしれません。

対話しながら授業が始まり、最初にみんなで見たのは、実際に川で溺れる様子をシミュレーションしたミニドラマ。
さっきまで賑やかだった子どもたちが、全員モニターに釘付けに。誰も言葉を発することなく、真剣な表情で画面を見つめています。その空気の変化に、水の事故を伝えることの重みを感じます。保護者のみなさんにとっても、水辺の事故を「わが家にも起こり得ること」として受け止める、シリアスな時間なのだと思います。
でも、事故の現実を伝えるだけで終わらないのが、AQUAkidsらしさ!
親しみやすい「サンダルバイバイのうた」や「サンダルバイバイおやこじょうやく」を通して、親子で命を守る約束の合言葉 #サンダルバイバイ を伝えていきます。水辺の事故を自分ごとに感じたこの瞬間だからこそ、親子が実践できる約束へ変えていく。この切り替えのタイミングが絶妙だと感じました。
「怖さを伝えるだけでは、事故予防の知識は広がっていかない」 これは、私がAQUAkidsに関わり始めてからずっと聞いてきた、すがわら代表の課題意識です。その課題に対する工夫が、参加した人たちにどう届いているのかを、今回初めて目の前で見ることができました。
続いての「オボレヌ○×クイズ」では、もうすっかりみんなの気持ちも変わって大盛り上がり!
子どもたちは次々に手を上げ、保護者のみなさんも一緒になって正解を考えます。座学のあいだ、子どもたちの集中が途切れることはありませんでした。
「東京マリンのスイミングコーチでも、溺れることがある?」
「溺れている人を見つけたら、絶対にやってはいけないことは?」
など、大人の私でも「え?どうだろう?」と考えてしまうクイズもあります。
そしてその答えは、プールで実際に確かめます。
頭で学んだあとは、いよいよ身体で体験。みんなでプールへGO!
コーチも溺れる? 座学の学びをプールで答え合わせ
プールで最初に行われたのは、東京マリンのコーチのみなさんによる、水の事故の寸劇です。先ほどの「オボレヌ○×クイズ」の答え合わせでもあります。
スイミングに通っている子どもたちにとって、コーチは泳ぎを教えてくれる存在。その「泳げるはずのコーチ」が溺れていく姿を見ることで、水の事故をよりリアルに感じられたのではないでしょうか。
溺れると聞くと、バシャバシャと水しぶきを上げ、大声で助けを求める姿を想像しがちです。でも実際には、大きな音や声を出すことなく、静かに沈んでいくこともあります。
目の前で溺れているコーチを助けようと、もう一人のコーチがプールへ。ところが、必死にしがみつかれ、二人とも溺れてしまいました。
さらに今度は、えみコーチがプールサイドから棒を差し出します。これなら安全に助けられるかと思った、その瞬間。
「わあーっ!」
ドボーン!
溺れているコーチに引っ張られ、えみコーチまで服を着たままプールの中へ!
大人も子どもたちもびっくり!驚きの表情です。

※高い姿勢のまま棒を差し出すすがわら代表。このあと溺れているコーチに引き込まれてしまいます。
引き込まれるとは想像していなかったので、私自身もその光景に声が出そうになりました。
溺れている人を助けようとして、慌てて水に入らないこと。陸上で身体を低くし、腹ばいになるなどして、つかまれるものや浮くものを差し出すこと。座学で聞いた知識が、目の前の出来事としてつながっていきます。
親子で、着衣泳を体験
いよいよ、親子での実技です。子どもたちも服を着たままプールに入り、日常着で水に落ちたとき、身体がどうなるのかを体験します。
終わったあとに感想を聞くと、「身体が重たかった!」と、子どもたちが口々に教えてくれました。水着で泳ぐ、いつものプールとは違います。参加した保護者からも、「うちの子、普段は泳げるのに、服を着ると下半身があんなに沈むことに驚きました」という声がありました。
泳げるから、溺れないとは限らない。クイズの答えを親子で身体を通して実感する時間です。
ポテトチップスが、命を守る浮きに
そして最後は、子どもたちお待ちかねの「浮き浮きタイム」!ここで、座学の最後に出されたクイズの答えが明らかになります。
「海や川に遊びに行くとき、役に立つおやつは?」
その答えは……ポテトチップス!
空気の入った未開封のポテトチップスの袋は、水に浮く力を持っています。
大好きなおやつの袋を抱えて、次々に浮く体験をする子どもたち。みんな、ニッコニコでかわいい!
事故の動画を見つめていたときの真剣な眼差しと、ポテトチップスを抱えて、体験を心から楽しむ笑顔。
水辺の危険にきちんと向き合いながら、怖いままでは終わらせない。この二つを両立させていることが、AQUAkidsの「オボレナイスクーール!」の大きな特徴なんだと思います。
※体験で使用したポテトチップスは、株式会社湖池屋様にご協賛いただいたものです。
スイミングコーチにとっても、新しい学び
プールでは同時に、ライフジャケットの着用・浮遊体験も行われました。この日、初めてライフジャケットを着た子どももたくさんいました。
そして意外だったのは、スイミングのコーチでも、ライフジャケットを実際に装着した経験のある方は少ないということ。スイミングスクールは、あくまで泳力を身につける場所です。海や川で命を守るための知識と、泳ぎを教える知識は、また別の分野になるのだと、改めて知りました。
参加したコーチからも、「股下のベルトまでしっかり留めるという、安全な装着方法を知ることができて勉強になりました」という声がありました。子どもや保護者だけではなく、水のプロであるコーチにとっても、新しい学びが生まれていたようです。

水辺の安全を、自分ごとにできる仲間を増やす
体験を終えた子どもたちは、「楽しかったー!」と大満足。お土産のポテトチップスを手に、笑顔で帰っていきました。
イベント終了後、改めて参加したコーチに感想を聞くと、「子どもたちが楽しみながら、最後まで集中して話を聞いていた姿が印象的だった」と話してくれました。実際に講座を体験したことで、コーチ自身にとっても新しい発見があったようです。
また、保護者の中には、お子さんに持病があり、学校での着衣泳体験ができなかったので、この機会に参加したという方もいました。こうした機会を通じて体験の場を広げていくことの大切さを、改めて感じました。
今回、準備から当日の体験までを間近で見て、改めて感じたのは、AQUAkidsは、水辺の安全を一方的に「教える」団体ではないということです。
Water Safetyという目的地に向かって、スイミングスクールやコーチ、保護者、そして子どもたちまで、一緒に進む仲間にしていく。
「サンダルバイバイ」や「オボレナイスクーール!」といった、思わず口にしたくなるネーミングや、クイズや寸劇などのユニークな取り組みは、そのための大切な要素です。
子どもも大人も、自ら考えたくなる体験を通して、水辺の安全を、自分ごとにできる仲間を増やしていく。それが、AQUAkids独自のスタイルなのではないでしょうか。
親子47名が最後まで夢中になり、全員が安全に体験を終えた1時間。その場を取材していた私にとっても、本当にあっという間でした。
東京マリン西新井スイミングクラブのみなさんの、「参加者のみなさんに楽しんでもらいたい」という思いも、随所に感じられました。丁寧な準備と連携があってこそ実現した、楽しくて、熱量の高い「オボレナイスクーール!」。
AQUAkidsが大切にする「溺れずに、笑おう」というメッセージが、確かに表れていた時間でした。

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